選手の目から見た、代表合宿!

東京合宿(大会会場BumBにて)



9月2日。ワールドカップの会場となる、BumB東京スポーツ文化館で日本代表の最後の合宿が行われた。8月の大阪合宿で、日本代表の正式なメンバー8名が決まり、選ばれなかった補欠選手は本大会には出場できないことになった。しかしわれわれ補欠選手にはまだやらなければならないことがある。それは日本代表の練習パートナーとして、世界制覇という目標を達成するために、少しでも貢献することだ。代表になれなくても、サッカーを愛する気持ちに、何一つ変わりはない。

私が8時半過ぎに会場に着いたとき、すでに日本代表の8名は集まっていた。彼らは事前に集まりミーティングをしていたようだ。大会前、最後の合宿ということもあって、かなり気合が入っているように感じた。お互いのニックネームを決めて、より密なコミュニケーションを図ろうとしていた。吉沢選手は「ヨッシー」、高橋選手は「タカ」、重松選手は「シゲ」など。これはとても大事な事だ。遠慮があっては、本当の意味での信頼関係は築けない。

今日のメニューは、日本代表対補欠チームによる練習試合がメインで、その他には基本となるセットプレー(コーナーキック、ゴールキック、フリーキックなど)の練習が行われた。今回、選手側から監督とコーチ陣に対して、チームの軸となる基本戦術を確立したいと言う要望があったため、各選手の考えなどを出し合いながら、練習は進められた。

われわれ補欠チームは、何とか代表チームを苦しめようと、チームの士気は高まっていた。パスやシュートの強さと精度、チームメートとのコミュニケーション不足など、日本代表の課題を浮き彫りにするためには、まず自分達が頑張らないと話にならない。今回の合宿には、まだ13歳の城下歩選手が強化選手として、補欠メンバーに加わった。彼は若さ溢れる大胆なプレーが特徴で、豪快な鋭いパスやシュートをガンガン打ち込む。将来の日本を背負っていく選手の一人だ。そんな彼を攻撃の中心に、われわれは戦うことにした。

城下選手を軸に伸び伸びとプレーを楽しんだ。私の期待通りに城下選手が、代表選手相手に全く物怖じせず、堂々とした動きを見せた。しかし次第に城下選手がマークされはじめ、思うようにボールがキープできなくなると、立場は逆転した。キーパーを務めたわたしの反応もいまいちで、0対3で一試合目は負けてしまった。代表チームがまだ仕上がっていない状態なのに、この試合内容では私たちとしても満足できない。更にショックだったのは、一点も奪えなかったこと。午後の試合でのリベンジを誓った。

午後になると、ゴールキックからの展開など、まず基礎的な練習を代表チームは行った。補欠チームはその傍らで、シュート練習をやった。なぜならわれわれの悩みは決定力不足だったからだ。合宿の最後。補欠チームと代表チームで第二試合目を行った。明らかに代表チームの雰囲気は、午前中と変わっていた。基礎練習の成果か、自信に満ち溢れた、落ち着き払ったプレーをしているように感じられた。

一試合目同様に私はゴールキーパーを前半務めた。代表チームのパスやシュートのスピードは格段と上がっていた。パスの精度も増していて、思うようにボールをつながれてしまった。私のコーチングが明確でなかったために、味方どうしの守りの連携がうまく取れず、われわれは次々と失点を重ねてしまった。前半だけで4失点。後半は、キーパーを葛西選手に交代して、彼を中心にディフェンスの修正がうまくいき、なんとかPKでの1失点のみに抑えることができた。スコアは、0対5。やるべきことはやった。その結果だ。悔しいが、仕方がない。素直に代表チームが、いい感じに仕上がってきた事を讃えたいと思った。

正直に言うと、この合宿が始まる前までは、日本代表は、チームとしてどう戦うのかがはっきりしない、不安ばかりが先行する悩みを抱えたチームに感じていたが、今回の合宿を通じて意思の疎通ができるようになり、チームとして一つにまとまることができたようだ。声出しはまだ不十分なところがある。そのことは課題として残ったが、彼らは確実にゴールに向けて、一歩一歩階段を上がり始めている。そして、その栄光への扉を開く日はもうそこに迫っている。そう信じたい。

大阪合宿 初日

8月2日と3日の二日間、初の日本代表合宿が、大阪のアミティ舞洲で行なわれ、

4月に選出された日本代表候補選手8名と補欠選手4名の計12名が合宿に集結した。

初日:この合宿は10月に開催されるワールドカップの強化練習が主な目的。でも最終的に8名の日本代表正メンバーが決まる重要な意味合いもあった。補欠選手にとっては逆転で代表選手入りするための最後のアピールの場。単なる強化合宿という雰囲気は全くなく、重苦しい空気が立ち込めていた。集合時間は14時30分。この合宿への意気込みを表すかのように、数十分前にはほとんどの選手が体育館に集まっていた。

まず始めは8名の日本代表候補選手をAとBチームに分け、補欠選手で結成されたCチームの3チームで競わせた。私はこのCチームだった。代表メンバーに入るためのラストチャンスを何とかゲットできるように、とにかく声を出して目立とうと考えていた。選ばれるかどうかより、とにかく自分が納得できるプレーをしよう!その想いがチームの皆に伝わればいいなとも思っていた。

15分間のゲームをひたすら繰り返す練習が始まった。いつもは国内ルールでプレーしている私たちにとって、「国際ルール」でのプレーは久しぶりだ。また、普段は別々のチームでプレーしている選手が一緒にプレーする難しさなどが原因で、各チームとも思うようなプレーができない状況が続く。そんな中、Cチームは最初から気迫あるプレーを展開した。何も失うものがない者の強さからか?みんな今出せる全ての力を出し尽くそうという熱い気持ちで戦った。モチベーションの違いはすごい。われわれはAチームとBチームを次々とねじ伏せていく。試合を重ねるごとにその勢いは増していくように感じた。

逆にAチームとBチームは、連動プレーができず苦しんでいるようだった。けれど次第に各選手の動きは噛み合っていく。さすが日本代表選手に選ばれた8名。後半には、二日目が楽しみになる試合展開が見られた。それでも初日に限って言えばCチームの気持ちの入った積極的なプレーが他チームを圧倒したと感じる。私たちの熱いメッセージはAチームとBチームに間違いなく伝わったはずだ。そんな初日の練習だった。

その夜、結団式が開かれた。ワールドカップに懸ける熱い意気込みを選手、監督、コーチ陣が語る。日本代表が世界一になることを誰もが強く望んでいる。それを実現するために陰でたくさんの人が、支援してくれていることも、忘れてはいけないと思った。

大阪合宿 二日目

二日目:この日は朝9時半から17時まで練習漬けというスケジュール。もちろん弱音を吐く選手は一人もいない。初日と同じA、B、C、3チームに分かれて、15分ハーフ10分休憩の練習試合が12時まで行なわれた。

各チームとも初日の反省を生かして、チームとしてのまとまりが感じられる連携プレーを随所に見せるようになっていた。パスを細かくつなぎ相手を引き付けて、逆の空きスペースにボールを出してシュートする、横のパスを相手に意識させ、一気に縦に鋭いパスを蹴って相手ゴールに迫ったり、など。チームプレーができるようになっていた。ただ、まだみんな声が出ていない。集中しているのは分かるが、やはりスポーツの基本は声出しだ。どんな言葉でもいい、声を出すだけで、相手へのプレッシャーは全く違う。それを徹底していたのが私たちCチームだった。ゲームの組み立ては、他よりやや劣っていたが、それを十分にカバーできる程、選手どうしの声の掛け合いがしっかりできていた。何とか代表入りしたい!補欠チームだってこれだけやれるんだ!そんな強い気持ちが、私たちに積極的に声を出させていたのかもしれない。

Bチームは、コーチ兼選手の高橋選手がチームメイトに声を掛けながら動き回り、チームに勢いをつけていった。泥臭い粘りのある戦いぶりは、対戦する私たちにとって嫌な存在だった。そんな中、最後まで苦しんでいたのがAチームだった。声出しができていないため、お互いの意思の疎通が不十分なのだ。技術力は高いのに、それを生かすチーム力が発揮できていない。チームとして大人し過ぎたのだ。

午後になると、監督は、今までのチーム構成をバラバラにして、あらたな混合チームを作り、再び練習試合を行わせた。どのチームも午前中の反省を踏まえて、さすが日本代表という内容のパフォーマンスを披露した。合宿の終盤、車椅子の充電がなくなり、リタイヤする選手が続出した。それは各選手が全力で戦い抜いたという証でもあった。通常、電動車椅子のバッテリーは、20分ハーフの試合を4試合こなすのが限界だ。国際ルールでは最高速度は時速10キロにもなる。その消耗度は、選手だけでなく、電動車椅子にも現れていたのだ。

夏の暑い熱い合宿が終わろうとしていた。合宿の最後に日本代表最終メンバーの8名が発表された。逆転で補欠チームのCチームから吉沢選手が代表に選出された。同じCチームで戦った私としても、彼が選ばれたことは素直にうれしかった。精神面でも技術面でも吉沢選手のパフォーマンスはこの合宿で際立っていたからだ。彼が日本代表の救世主になるのではと、密かに私は期待している。

補欠選手は大会には出場できない。その事実は変わることはない。私たち補欠メンバーと正メンバーの立場は明らかに異なる。しかし、この合宿を通して強く感じたことは、世界一になりたいという、熱い思いは何一つ変わらないということだ。同じ熱い思いを抱いている仲間たちが世界相手にどこまで戦い抜いてくれるか。私は日本代表選手たちと同じ気持ちで、これからも代表を見つめていくつもりだ!